' snowflake '
雪が降るたびに雪だるまやら雪うさぎを作ってはしゃぐ私に、中谷宇吉郎の『雪は天からの手紙』という本を友人がくれました。その時初めて雪の顕微鏡写真を見て、ものすごく感動したのは、その硬質さと柔らかさが「まるで銅版画だ!」と思ったからでした。すっかり心奪われ、本物を見てみたくなって、石川県にある中谷宇吉郎 雪の科学館にも行ったほどでした。
今回のこの雪の結晶のようなものは、' Christmas Ornaments ' (2024年11月3日の記事)でも登場したクリスマスの飾りの一部で、雪でも何でもないのが情けないのですが......。実際に自分で顕微鏡を覗いて観察ができないので、誰も踏んでいない、無限の雪の結晶の上を走り回った感触を思い出しながら、落ちた結晶と降り落ちた結晶を版画にしました。私が「銅版画だ!」と思った質感は思った通りディープエッチングがぴったりでした。
作品上部の背景の黒い部分は、昨年から取り組み始めたスクリーンプリントを使いました。これは昨年茅ヶ崎美術館で開催された「小さな版画のやりとり」展(2024年5月29日の記事)で見た池田満寿夫の蔵書票をきっかけに取り組み始めました。まったく定かではないのですが、多分銅版画とスクリーンプリントを使っていて、すごくおしゃれでかっこいい!質感の異なる版種を重ねるの面白い!と感動しました。(違うかもしれない。)
どんな版種も刷りは難しい。今年もっともっとたくさん練習をしていきたいと思います。今回もトレーシングペーパーで作った半透明の封筒に収納するタイプにしています。きれいな紺色にに銀のラインが入ったミニ額があったので、そちらにも入れてみました。
作品サイズ 3.5×5cm / ディープエッチング、スクリーンプリント
onlineshop — 版画ゆうびん no.31 'snowflake ・ 銅版画 'snowflake'(ミニ額)'
はじめのいっぽ展
アーティストの年賀状を紹介する展示に初めて参加させていただきます。
昔々小さい頃、母が木版画、しかも多色刷りで年賀状を作っていたというのが私の版画の記憶の一番はじめです。その後小学生高学年の頃は私がその年賀状作りを引き継いで数年作りました。我が家に限らず、複数刷れる版画は年賀状の定番だったと思います。
そんな昔のことを思い出したりしながら、過去の作品('Shimenawa Wreath' ー2023年1月7日の記事)ではありますが、少し葉書紙面のデザインを変えて出品させていただきます。たくさんの作家さんたちの年賀状を見に、お立ち寄りいただけたら幸いです。
日時:2025年1月14日(火)〜1月19日(日)13:00〜19:00(最終日18:00)
場所:Atelier Olive 銀座ひとつぼギャラリー(東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル207号)
アクセス:東京メトロ有楽町線「銀座一丁目」駅10番出口より徒歩1分 / 東京メトロ銀座線・日比谷線・丸の内線「銀座」駅A13番出口より徒歩5分 / 東京メトロ銀座線「京橋」駅2番出口より徒歩6分
公式オンラインショップ:Atelier Olive 銀座ひとつぼギャラリー
instagram:Atelier Olive 銀座ひとつぼギャラリー
' みかんあめ '
プレス機からあげた瞬間、「美味しそう!」と言ってしまったくらい、きれいな色が出てくれて、とても嬉しかったです。
可愛らしいみかんの形のキャンディーに一目惚れ。これを版画にしたい!と思ったものの、版画にしたいくらい惹かれたのは色、黒で刷るわけにはいかない、でも色苦手だし...。何はともあれ、やってみないと分からない。
この1年くらい、色を付けた作品をいくつも試みていました。ファイルにはいろいろな色の見本を作った形跡が残っていますが、どれもこれも全然上手くいかず、表に出るまでには至りませんでした。目の前にあるこの一つの小さな作品は、下絵を描いて版に刻み、刷り出している時間はたった数時間でしたが、私のこれまでがなければできなかったものだなと、しみじみ思った制作になりました。
これは版画ゆうびんのシリーズなので、いつも通り箱に入れる予定でしたが、セロファンに包まれたあめや、ガラスの器に入ったあめの雰囲気を出したくて、トレーシングペーパーで作った封筒に入れました。透けて見えるオレンジと黄色も可愛くて気に入っています。
作品サイズ 3.5×4.5cm / エッチング、アクアチント、雁皮刷り、1版2色刷り
onlineshop— 版画ゆうびん no.30 'みかんあめ'
大好きな作家さんの個展やグループ展はどうしても期間が短いものも多く、気付いた時は終わっていてショックなことがよくあります。展示情報をすぐに得られるようにSNSを始めてみたものの、全然上手く情報を追えず結局見逃し、仕方なくぽちぽち一つずつ展示探してメモして、ということをしていました。せっかくだしと、公開用のページ「版画の展示・展覧会」を作りました。(このページは2025年10月31日で終了しました。)
自分用に作るのと違って、見ていただくためのページはやはり時間もかかるので、いつまで続くか分からないところではあります。ぼちぼちの気まぐれ更新ですが、ご活用いただければと思います。今のところ「銅版画制作工程 トップページ」からリンクしているのみです。(実は秋から稼働していたのですが、続く自信がなかったので隠れページ状態でした。今もあまり自信なし。こっそりなくなっているかも。)
最大の難点であり、公開するものとして続けるモチベーションがいまひとつな理由は、画像を載せられないこと。パッと見て「これ見に行きたい」「この作家いいな」と思えるようにできたら一番なのですが、著作権のことがあるので文字情報のみになってしまいます。できる限りのリンクを貼っていますので(時間が経ってのリンク切れご容赦ください)、一目でも良いので飛んでみていただけたら嬉しいです。facebookやinstagramのアカウントを持っていなくても、最初の何枚かの画像は見られると思います。すてきな版画家さんがたくさんいます!
展示に足を運んで、実際の版画に触れていただけたら嬉しいです。
銀座OギャラリーさんのGALLERY GUIDE GINZAには、版画に限らず銀座の展覧会情報がたくさん掲載されています。展示巡りにぜひお出かけください。
先日調べ物をしていたらこんな記述がありました。
版画の基本4版種とは、木版画、銅版画、リトグラフとシルクスクリーンであるが、この4版種がこれからもこのまま存続するとは思えないのが現状である。例えば、19世紀リトグラフの時代と呼ばれるほど脚光を浴びた印刷技術もオフセット印刷にその座を開け渡し、印刷工場から石版や金属リトグラフプレートなどが姿を消して半世紀が過ぎようとしている。このことは何を意味するかと言うと、版画技法としてのリトグラフで使用する版材や製版用材料が入手困難な時代を迎えていることを示している。加えて、金属板リトグラフに於いてはアルミ版を研磨する工場もかなり少なくなっている。
ー武蔵篤彦「コラグラフ版画技法の現在」京都精華大学紀要 第三十六号 (2010年) p289
ここにある「アルミ板を研磨する工場」がついに日本からなくなったらしいという話を2、3年前に聞きました(違ったらごめんなさい)。リトグラフの作家もたくさんいるし、これからも普通に存在し続けるものと呑気に思っていたので衝撃を受けました。
現在、リトグラフは新しく木の板を使って作る方法を版画家たちが日々研究し発信しています。シルクスクリーンだって20世紀に入ってできた新しい技法ですし、デジタルプリントも版画の一形態として定着しつつあります。当然ですが版画も常に変化していますし、歴史を見てみると想像以上に短期間でさまざまな版材、技術が興亡を繰り返してきました。
漆黒の画面を作ってからイメージを削り出していくメゾチントという銅版画技法も、絵画の複製技術として盛んに使われた時代がありましたが、写真の出現により衰退。20世紀に入って長谷川潔によって再興され、芸術家の表現方法として今ではすっかり定着しています。浮世絵版画もこれと同じような流れな気がします。明治初期に新しい印刷技術が登場し急激に衰退しましたが、その後芸術家による作品制作の手段として見直されました。「新版画」というジャンル名となって、近年各地で展覧会が開催され、とても人気のある分野となっています。
そういう流れだからなくなっても仕方ない、いつかまた再興するかもしれないし...ということでは全くなく、素晴らしいものだから途切れてほしくはないし、たくさんの人に触れてほしいと思っています。豊な創造は広い裾野に支えられていると日々つくづく感じます。作り手になったり、作り手でい続けるのは難しくても、鑑賞者としてでも関わってくださる方が少しでも増えたら嬉しいです。超絶微力ながら、私もその時々の立場から頑張りたいと思っています。
とりとめなく溢れたものを書いてしまいました。なんだか曖昧な記述もありそうなので、おすすめの版画の書籍をご紹介します。ご興味持たれましたら、ぜひ。
書籍
松山龍雄『版画、「あいだ」の美術』阿部出版 (2017)
大矢雅章『日本における銅版画の「メティエ」ー1960年以降の日本現代銅版画表現のひろがりからの考察』水声社 (2019)
佐川美智子 監修『版画 進化する技法と表現』文遊社 (2007)
武蔵野美術大学油絵学科版画研究室+通信教育課程研究室編『新版 版画』武蔵野美術大学出版局 (2012)
山口啓介、広沢仁、杢谷圭章 編集『版画のコア / カタログ』 (2021)
年内最後の投稿になりそうなのでご挨拶です。
今年は全国各地で様々な展示に参加させていただき、とても活動的な年になりました。大切な存在と別れ、真っ暗な気持ちのまま、それでも作り続け、版画とともにいられたことは奇跡のようでした。月並みな言葉になってしまいますが、色々な方の支えがあってできていることだと思っています。心からの感謝をお伝えしたいと思います。本当にありがとうございました。
2025年がみなさまにとって良い年でありますように。
画材屋さんの版画のコーナーにこの「ワンダーカッツ」(¥4,800) を見付けたのはいつだったか、数年前。厚紙などを型抜きするためのダイカットマシンですが、これがプレス機として使えるとして置かれていました。
すぐにここで紹介しようと思ってみたものの、刷れる紙の最大サイズ16×7cmのこの機械を、どういう方を対象にどんな紹介をしたら良いのか、方向性が分からないまま長らく迷っていました。
当然プレス機より圧は弱いので、せめて紙とインク(と、できればラシャ)は専用のものを使って、できるだけきれいに刷り上げられるようにしたい。良い仕上がりにならないと、作り続けようとは思えない。せっかくやってみようと思ってもらえたなら、凹版きれい!もっと作りたい!と思ってもらいたい。でも少量で買うのが難しく、価格が高くなり続ける紙とインクが必要と言われたらやるかな。
なぜこんなに道具と材料について色々考えるかというと、上手く出来上がらなかった時、それはその人の力量とかより前に、道具や材料の影響であることが、思っているよりずっと多いからです。専用専門のものに変えるだけで劇的に良くなったりします。自分にはできないと思ってやめてしまう前に、刷り上がりに直結する道具だけは揃えることをおすすめしたいのです。
なーんてぐずぐずしている間に、版画専門誌上で私の好きな版画家の先生がワンダーカッツを使った作品作りを紹介するというではないか! 小さいサイトながら銅版画については網羅できるようにしていきたいと思っている身として、やっぱりこれは紹介しなければと思い、「ワンダーカッツを使って 前半ー版の準備・転写・描画」、「ワンダーカッツを使って 後半ー紙の準備・刷り・洗浄」のページを作りました。
今の私の考えられるベストな道具と材料の組み合わせでご紹介しています。できる限り100均で買えるもの、家にありそうなものでの代用を考えました。本当に笑っちゃうくらい何でも揃う100均恐るべし。金属ヤスリとトレーシングペーパーまで買えるのか...すごいな。薬品は使いませんし、お子さまでも安心して作れます。冬休み、ちょこっと作れる銅版画、紙版画を楽しんでいただけたら幸いです。
SMALL WONDERS ART SHOW 2024
今年は色々と憧れの地でグループ展に参加させていただきましたが、最後は高円寺にあるギャラリーに出品させていただきます。アートやデザイン関連を主にした書籍や雑貨、子供向けの絵本、海外から取り寄せた洋書など販売しているすてきなギャラリーです。総勢105名!!の作家による楽しい予感しかしない作品展示即売会。ご購入希望の作品はその場でお持ち帰りいただけます。
出品作品 :'Christmas Ornaments' 'cat tins' 'Liqueur glass#1', 'dessert dish#2'
いつもはその年に制作した新しいものだけを出品するのですが、今回ちょっと懐かしい作品も1点出品します。個展に出してしまうと、その後実物を見る機会はほとんどなくなるので、この展示でご覧いただけたら嬉しいです。
12月21日(土)17:00-19:00のオープニングレセプションは、どなたでもご自由にご参加いただけます。ぜひご来場ください。
年末のお忙しい時期だとは思いますが、冬休みの一日、お近くにお出かけの際はぜひお立ち寄りください。
日時:2024年12月17日(火)ー12月29日(日)13:00-19:00(最終日17:00)
場所:LOCAL GALLERY・BOOK(東京都中野区大和町1-67-1)
アクセス:JR中央線「高円寺」徒歩6分
公式サイト:LOCAL GALLERY・BOOKS
instagram:@local_koenji
2024年12月17日追記
会場の様子をLOCAL GALLERY・BOOKさんより送っていただきました。圧巻!
椿
— ツバキ科ツバキ属の常緑樹。日本原産で、広く全国に分布し、国外では朝鮮半島南部と中国、台湾に咲く。日本に自生するものは、ヤブツバキ(藪椿 / これを一般的にツバキと呼んでいる)、ユキツバキ(雪椿)、ユキバタツバキ(雪端椿)。世界では250種類以上が知られる。18世紀にイエズス会の修道士ゲオルク・ヨーゼフ・カメルによってヨーロッパに紹介され、後にカメルの名から 'Camellia (カメリア) ' と英語名がつけられた。
お気に入りのハイキングコースの途中に広場があって、そこで一休みお茶を飲むのが楽しみです。そこにあるテーブルの上に誰かが集めた木の実が置かれていました。それがとてもおしゃれで一目惚れ。椿の実でした。ちょうど椿の蕾が出てきた頃だったので、その実は前の年のもの、もしくはもっと前のものもあったかもしれません。木の下をごそごそ、枯葉をかき分けてみると結構あって、開いているもの閉じたままものも色々拾い集めました。
一年近く土の上でころころしていたわけで、骨董的な渋い肌質になっていたのが私のツボだったようです。テーブルに置いて行った人も、休憩しながら足元にあった実を見付けて拾い上げたのだと思います。その人が持ち帰らなかった、もしくは忘れたおかげで出会えて版画になりました。
9月に掲載した 'harvesting' ( 2024年9月21日の記事 ) にも使用している「北方グリーン」を、今回も雁皮紙のように刷り込んで使いました。雁皮紙じゃないものを使っても雁皮刷りと呼んで良いのか? 迷います。
作品サイズ 12×12cm / エッチング、アクアチント、和紙
onlineshop — 銅版画 'ツバキノミ'(額装)
ハゼノキ
— ウルシ科ウルシ属の落葉樹。東南アジアから東アジアの温暖な地域に自生し、日本では関東地方以西に分布する。紅葉が美しく、別名「ハゼモミジ」とも言われる。実から取れる油は、古くから和蝋燭の原料として使われてきた。
強い風が吹き荒れた日の次の日、道路にごっそり落ちていたハゼノキの実。節分にまく豆のような質感で、何となく見ていると美味しそうで、ついつい拾い集めてしまいました。ウルシ科なので葉っぱはあまり触れてはいけないらしいですが、木の種類を調べたく、葉っぱを一枚もぎってしまいました。今回は大丈夫でしたが、お気を付けください。
蝋燭の原料となってきたことから、英名は'Japanese Wax Tree' ということになるようです。ちょっとタイトルにするには、私基準の風情が感じられないので、久しぶりに日本語にしました。'ハゼノキノミ'。こういうものを実と呼ぶのか種と呼ぶのか何か別の呼び方があるのか、いつもよく分かりません。
作品サイズ 18×18cm / エッチング、アクアチント、雁皮刷り
onlineshop — 銅版画 'ハゼノキノミ'(額装)
「ハンドメイド・クラフト・手仕事の通販iichi」の11月期間限定クーポンのお知らせです。
今年もわくわくの季節になってきました。やっぱりクリスマスのキラキラは楽しい! 最近はお正月の飾りもすてきなものがたくさんあって、この時期は色々なものが欲しくなってしまいます。飾りだけじゃなくて冬の温かいスープを入れるのに良さそうな器、暗めになりがちな冬の服に合わせたいきれいなアクセサリーや小物。たくさんの一点ものが揃うiichiでどうぞ冬のお買い物をお楽しみください。
ご利用期間
2024年11月22日(金)10:00〜12月13日(金)23:59
ご利用方法
※ iichiに会員登録されている全てのお客さま、新規会員登録されたお客さまが対象です。
※ 作品代金の10%が割引となります。送料は割引対象外です。
※クーポンを使用せずにお支払いを完了したお取引に、後から割引を適用させることはできません。
※ クーポン1度のみご利用いただけます。
' Ice Skating Girl② '
「スケーターズワルツにのせて、もみの木の周りを3人の子どもがスケートでくるくると回るかわいい木製のオルゴール」(2023年11月11日の記事)から、昨年 'Ice Skating Girl'と'Ice Skating Boy'の2つを作りました。3人目の女の子をやっと、今年のクリスマスに向けて作りました。
度々激しい姉妹喧嘩に巻き込まれたオルゴール。その後台所の棚に移され大切にされていたはずなのですが、台所なので今度は油がこびり付き、掃除の度に塗料が薄くなったり、脆くなった接続箇所が折れたり、本当に管理の酷さがお恥ずかしいです。アンティークやビンテージが好きで、それを大切に使っていた人たちのことに思いを馳せたりするのに、私自身はこんなに適当で、素敵なものを持っていても次の代には渡せないのだろうと悲しくなります。ということで状態が良いうちにと、ちょこちょこフリマなどで放出中です。
作品サイズ 5.5×9cm / エッチング、アクアチント、雁皮刷り
onlineshop — 版画ゆうびんno.29
'Ice Skating Girl② '(銅版画)
10月1日からの郵便料金値上げはあまりに大きく、「ゆうびん」と名乗っておきながら、私自身がDMもクリスマスカードさえも出す気力がなくなっている状態です。葉書に85円もかかるなんて厳し過ぎるし、封書の110円などもはや完全に贅沢品。とても残念ではありますが、郵便物をお送りする機会を減らさざるを得ない状態です。特にグループでの展示のお知らせはこちらのブログ、もしくはinstagram (@hanga.coya) でご覧いただけますと幸いです。クリスマスカードについては、できる限りお送りしたいと思っています。
昨年のクリスマス、アンティークの可愛い女の子のオーナメントをいただきました。陶製ではなく、ソフビのような感じでもなく、張り子?のような感じがします。どのくらい古いものなのか分かりませんが、とてもきれいな状態なので、どこかの誰かが大事に大切に、その季節だけに飾っていたのかなと思いを巡らせたりしています。私は大切にしまっておくのももったいなく、この一年ずっと壁にかけていました。色褪せに気を付けてこれからも大事にしたいと思います。
周りに置いたのは雪の結晶の飾りです。こうして何かと何かを組み合わせて配置したり組み立てるのが、あまり得意ではなく、これを版画にしようと思った物は、いつも中心にどんと一つで作品にします。でもこれは最初からこの組み合わせが絶対可愛い!と思いました。並べ方はずいぶん悩みましたが、うん、すごく良い。
いつもクリスマスが近付いてから、クリスマスソングを聴きながら作っていましたが、今年は珍しく早めに作り始めました。気温35℃の作業場で作っていたので私の思い出としては、暑い!です。
作品サイズ 12×12cm / エッチング、アクアチント、雁皮刷り
onlineshop — 銅版画 'Christmas Ornaments'(額装)
銅版画制作工程「銅の板を切る・磨く」のページを改訂しました。
画材屋さんでぴかぴかに磨かれた銅板を買える時ばかりではなくなったので、ホームセンターなどで購入し、切断と表面磨きをしています。「切る」に関しては内容は変わらず、画像を増やしました。「磨く」はこれまでピカールだけでしたが、耐水ペーパーと青棒を加えました。好みの肌質を作れるようにもっと練習したいなと思いました。
相手は金属。ついつい力を入れてしまいたくなりますが、切断も研磨も強い力でというよりは、同じ場所を繰り返し繰り返し切り込みを入れる、磨くのがコツだと思っています。銅板切断の専用道具もありますが、OLFAの特大刃カッター(25mm)が手っ取り早く、歯もどんどん変えていけるので使いやすいです。大きな版が多かったり、毎回鏡面磨きくらいにしたい場合は、車磨きなどに使われるポリッシャーやランダムサンダーを買ってしまった方が、速くて安いのではと思っています。
「僕は機械ですむことは極力利用する主義だ」ー深澤幸雄『銅版画のテクニック』より。
色々なDIY機材が手頃な価格で入手できる今は尚更。制作のお役に立てれば幸いです。
銅版画で使う洋紙についてのページに続いて、和紙についてのページ「和紙に刷る」を作成しました。
美濃、越前、土佐、石州...全国各地に和紙の産地がありますが、徳島県の阿波も有名な産地の一つです。その徳島で2023年に開催されたミニプリント展に出品するにあたって、色々な和紙を試していました。最終的に私が選んだのは近江の和紙だったのですが、改めて、扱いやすく、表現の幅を広げることのできる和紙について考えてみたく、版画に適した和紙をたくさん作っているアワガミファクトリーの和紙を試してみることにしました。
濃いベージュ、茶色系は他でも色々ありますが、アワガミファクトリーの版画用和紙サンプラーを並べて見た時に、洋紙で言うナチュラルホワイト系(黄味系)にほんのり緑味、グリーン感が感じられるものがあり、これがとても爽やかで美しいと思いました。これが阿波の特徴なのかは分かりませんが、他であまり見ない良い色味だと思います。
完全に緑な「北方グリーン」は、薄手なので私は雁皮紙のように刷り込んでしまうのですが、これまでにない色で、とても良い出会いとなりました。
版画で和紙というと、やはり木版画に適しているものが多い印象で、銅版画に使うのは難しいのではないかと思ってきました。細い溝に詰めたインクを刷りとるために、紙に水分を含ませ強い圧をかけるので、それ用に作られた洋紙に敵うものはないというのは、今でも変わらない感想です。でも艶という点ではやはり和紙に敵うものもなく、だからこそ私は雁皮刷りが大好きで必ず使うのですが、まだまだ試すべき和紙がたくさんあるのだと奥深さを思いました。
BFKやArcheが上品な素晴らしい色だ!!と感動した感動した騒いでいましたが、白鳳セレクトという和紙はそれと同じくらい素晴らしいと思いました。ふわふわ柔らかい見た目も、抑えた白さもきれいだなと惚れ惚れします。ただ銅版画に向いているかと言うと、私の不慣れもあるのかもしれませんが、難しいと今まだ思っています。
私がやたら高い高いと言っている輸入物の洋紙と同じように、和紙も(和紙こそ)高級品です。でも今回使用した和紙の中には手頃な価格で購入できるものもあり、これならまだまだ銅版画を続けられると思いました。ずいぶん前から和紙も存続の危機と言われていますが、和紙も版画もこれ以上先細ってしまわないように、できるだけたくさんの方が続けてくださったらと思います。私もその一人として頑張りたいと思っています。
参考
ー 全国和紙産地マップ 全国手すき和紙連合会
ー 紙への道「和紙について」 吉田印刷所
関連するサイト内ページ「感動の紙 (2024年4月28日の記事)」、「版画用紙×雁皮紙(2024年7月20日の記事)」