私が銅版画を大好きな理由の一つ。「美しい黒」。
その割にインクについてじっくり調べたこともなく、いつも一つのインクで満足していました。調合まで考えられるか分かりませんが、それぞれの黒の違いくらいは知って使えるようにメモしたページです。
銅版画用インク
銅版画用インクは、凹版の印刷の際に使用される、顔料に水酸化アルミニウムなどの体質顔料と焼亜麻仁油（焼リンシードオイル・プレートオイル）を媒質として混合し、練り合わせた油性のインクです。
銅版画用インクは、油絵具とほぼ同じ成分で構成されていますが、銅版画で使用するという性質上、適度な硬さと拭き取りやすさ、紙へのインク移りの良さなどが求められます。そのため、媒質である亜麻仁油は加熱燃焼させ脂肪分を飛ばします。この焼亜麻仁油を練って使用することで粘りが少なく腰が強い適度な硬さのインクが出来上がります。
よく使うシャルボネール（CHARBONNEL）社のインクの特徴を日本語は画材屋さん.comから、英語はCHARBONNELのサイトから引用です。訳ではありません。
Carbon Black
・もとはルフランから出ていた標準的なブラック。F66と同じく使用でき、版式は問わない。
・Carbon Black is a warm black. This etching ink has a low viscosity and is extremely easy to wipe. This ink is particularly useful for test run prints.F66
・標準的な黒。拭き取りやすく、全ての版式に使用できる。
・Black F66 is a medium intensity, ivory & carbon black intaglio ink. Delivery a medium intensity, it delivers a low viscosity and is easy to wipe.
Pigments: PBk9-PBk9Black RSR
・緻密で深い彫り（特にビュラン）の中にもよく入る。 拭き取りやすい。青みを含んだ黒。
・Black RSR is a Carbon Black Intaglio Ink. Black RSR delivers a powerful black finish. It is viscous and supple.
Pigments: PBk9-PBk6Soft Black
・穏やかな黒。軟らかく、拭き取りが非常に簡単。
・Soft Black (Doux) is an Ivory Black Intaglio Ink. This Soft Black offers a low viscosity and is easy to wipe. The ink is very supple and relatively opaque. Soft Black can be used to lower the tones of a plate which has been engraved too heavily.
Pigments: PBk9Black 55981
・色味はRSRと同じ青みだが、RSRよりも軟らかい。
・Black 55981 is the universal soft black intaglio ink, composed of ivory and carbon black. This very viscous ink delivers a supple black that is easier to wipe than our Black 55985
Pigments: PBk9-PBk7Black 55985
・ドライポイント、アクアチント、メゾチントに適している。黒味の強い濃密なインクで、拭き取りにくい。他の黒インクの補強にも使われている。
・Black 55985 is a very dense black intaglio ink used to enhance other blacks. It is made from a mixture of ivory & carbon black and prussian blue.This very deep, slightly blue black etching ink is used to strengthen other blacks.
Pigments: PBk9-PBk7-PB27Black 71303
・ビュラン、アクアチントに適している。光沢のある赤味を含んだ黒。55985より拭き取りやすい。
・Black 71303 is a warm black intaglio ink with a hint of red. It is made from a mixture of ivory & carbon black and prussian blue. Black 71303 is a viscous, greasy black ink that takes time to wipe.
Pigments: PBk9-PBk7-PB27Black Luxe C
・ドライポイント、アクアチントに適している。光沢のある青味を含んだ黒。55985より拭き取りやすい。
・Black Luxe C is a soft black intaglio ink composed of a mixture of ivory & carbons blacks and Prussian Blue. This black is slightly blue tinted and has a low viscosity.
Pigments: PBk9-PBk7-PB27Black Vignette Luxe RSA
・手刷り凸版用（木版、リノリウム版）に適している。
・Black Vignette Luxe RSA is a supple black ink used for typographic printing by hand with lino and wood engravings. Black Vignette RSA is very supple to work with. We recommend that you apply it with a a relief engraving roller.
缶で買ったインクがカピカピになって大部分を失うのを避けるため、空チューブに詰め替える作業をしました。でもいつの間にかリニューアルされていた缶、くるくる閉めるタイプの蓋の缶はもしかして乾燥しないの？チューブに詰め替える作業も結構大変というか、私の苦手なタイプの作業なので、何かまた考えたいなと思っています。
上の写真のように缶やチューブから出した段階での見た目は結構違うのですが、下の画像のように、黒い面が多くはない絵では刷った結果にそんなに違いがありません。並べて見ないと分からないし、少し暗いところで見ると並べても分からないし、そもそも並べ見たりしない！
私が楽しいということ以外に特に意味のない話になってきしてしまい、私自身も時間を使うならここじゃなかったかなという感想もあり、「黒インク」のページはこのまま終わりにしたいと思います。
顔料から調合すればその割合によって作品の雰囲気が大きく変わり、きっと作家性もすごく出るのだと思います。メゾチントや、アクアチントが画面の多くを占める作品では市販のインクでも使い分けたり、混ぜたりする意味は多いにあると思っています。ただ、そこまでこだわらなくても、販売されている完璧に完成されたインクを使えば、どんなものもきれいに仕上がるのだと思いました。使いやすさ拭き取りやすさで選ぶとしたら、55985以外ならどれでも、Carbon Blackは特に素晴らしく最強だと思います。...という感じです。
シャルボネ公式サイト（CHARBONNRL Intaglio Etching Ink）にきれいな色見本が掲載されています。
