コラグラフ Collagraph

凹版凸版の図説

「コラグラフ」は、ギリシャ語で「接着する」という意味の「collo / kollo」に由来する「コラージュ( Collage) 」と「グラフィック (Graphic) 」を合わせた言葉と言われています。上の図の通り、凹版画も凸版画も刃物等を使って凹んだところを作りますが、コラグラフは凸部を作ります。

木や紙や金属の板に布や紙を直接貼ったり、ボンドやメディウムを塗って盛り上がった部分を作り(製作工程でご紹介している「その他の技法—カーボランダム」は更にそこに砂や炭化ケイ素を撒いてざらざらな面や線を作ります)、そこにインクをのせて刷り取ります。

一番よく使われる版形式による分類(凸版、凹版、平版、孔版)のどこに入るのか調べていると、色々な記述があります。それぞれ着目するところによって微妙な違いがあるようです。下にいくつか引用させていただきます。

版形式の分類自体は、これは私の理解の仕方ですが、インクのとどまる場所に着目していると思っているので、そうなると多くの場合で凸版画の中に分類されるのだと思います。ただ作っている者の感想として、第5の分類作ってもいいんじゃない?っていうくらい仕組みが違うものにも感じます。

ちなみに凸版画でも凹部にインクを詰めて刷ることもありますし、凹版画でも凹部ではない部分にインクをのせて刷ることがあります。ただメインの方法というよりは、あくまでその版種の中のその他の技法の一つとして扱われていると思います。コラグラフも作り方によっては凹部にインクを詰めても良いわけですが、凸部にインクをのせる方が多いだろうなと思います。

版画も本当に作家の数だけやり方があって、どれだけでも広がっていけるものです。展示でご質問いただいた時や、キャプションを付ける時以外、技法について意識しているわけではありませんが、知っていると面白いこともあるかと思い、まとめてみることにしました。

コログラフ(原文ママ)は、コラージュ版画の意。アメリカの版画家グレン・アルプの考案。合版、厚紙などの版面に特殊な接着剤、糊状塗料、粉末剤などを用い、紙、布、金属板、合成樹脂板などを接着コラージュしたり、筆で描いたり粉をふりかけたりしながら版を作る。
主として凹版形式に適した版画である。印刷は凹版プレスによるが、版画の凸部も重要な効果として用いられる。(関野準一郎氏による)

—吉田穂高 駒井哲郎 利根山光人 福井良之介『版画の技法』美術出版社 1968

コラグラフは、シナベニヤの合板、イラストボードの厚紙や金属板をベースプレートにして、紙、糸や布などを木工用ボンドで接着しながらイメージをつくり、アクリル描画材料であるメディウムやジェッソでコーティングし製版したものを、凹版及び凸版形式で印刷する版画技法であると一般的に定義できる。

—武蔵篤彦「コラグラフ版画技法の現在」京都精華大学紀要 第三十六号 (2010年) p289

版画は版の仕組みから4つの版種に分類される。この内凹版、凸版は何らかの手法により版材の表面に凹部または凸部を成形する。凹部を成形する版種の代表的なものが木版画とエッチング(腐食銅版画)である。(中略)凸部を成形する技法で代表的なものが紙版画とその発展形であるコラグラフである。

—山口雅英「エンボス加工製版による紙版画技法の研究」造形学研究所報 二〇一六年十二号 (2016年) p7

木版画をやっている方がこの技法を併用する事が多いです。(中略)「4つのポピュラーな版画」の項目でも、コラグラフは木版画のジャンルの中に説明をしました。
もちろん、「コラグラフ=版材に色々な素材を貼り付けたり、塗ったりして作る版画」なのですから。版材は木に限らなくても良いし、版の材料を工夫すれば銅版プレスでも刷れるわけです。

版画HANGA百科事典 コラグラフ 版画のミクロコスモス

「コラグラフ」の名称はコラージュとグラフィックを合わせた造語ですが、1950年代の初め、ワシントン大学芸術学部の教授グレン・アルプス(Glen ALPS 1914〜96)がこの技法を研究、命名したといわれています。しかし、ご本人の説明ではギリシャ語の「Kolla」は「糊」を意味し、素材を糊で貼付けて版を作るところから「糊版画」と理解する方が正しいとも聞きました。

—黒崎彰『世界版画全史』阿部出版 2018