銅版画制作工程
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描画が終わったら腐食液に入れて腐食していきます。
・バット(タッパーでも)
・腐食液(塩化第二鉄)
・しょうゆ
・タイマー
・ペーパータオル
・ゴム手袋
・重曹
・計量カップ
・計量スプーン
お好みで
・洗濯ばさみ
・セロテープ
腐食される、金属が削られるということは、腐食される部分から金属のくずが出るということ。その金属のくずが描画した線に詰まってしまうのを防ぐため、版面を下にして腐食液に入れています。
バットの底の四隅に吸盤や消しゴムを置いて乗せるという方法もありますが、全面に描画している場合は使えないので、私はテープで取手を作って腐食液の中で吊っています。
セロテープでタブを作る要領で作ります。取手の部分は長めに、版の裏に貼るために残しておく粘着部分は版の大きさによって決めていきます。
テープの粘着力が強すぎると剥がす時に腐食液が飛び散らかったりして面倒なので、粘着力ちょっと弱めのテープがおすすめです。
版面を下にするかどうかも好みなのではないかと思います。上向きに入れて数分おきに版を揺すっても良いですし(剥がれやすいソフトグランドエッチングではこの方法を使っています)、せっかく自分のコントロールの及ばない腐食液任せの工程なので、金属くずの詰まりも楽しんでしまうのも良いと思います。
タイマーをセットして、腐食液に入れていきます。先ほど作った取手の片方をバットの縁に洗濯ばさみではさみ、腐食液の中で浮くようにもう一方の取手を洗濯ばさみで固定します。
できる限り腐食液の飛散拡散を減らしたいので、ペーパータオルなどで拭きながら作業しています。
(1)腐食液をよくきって、取手をはずし、ペーパータオルで腐食液を拭き取ります。
(2)別のバットに移し、しょうゆをかけます。版の縁にもしっかりしょうゆが行き渡るように、全体に馴染ませます。
(3)水10:重曹1の割合で作った液に銅版を入れて中和させ、腐食を完全に止めます。
腐食液(酸)と重曹(アルカリ)の反応によって、塩化第二鉄液を含んだ気体と毒性の強い沈殿物が発生します。腐食液を可能な限り事前に拭き取ってから入れるようにしています。
(4)水ですすいで乾かします。
エッチングでは、腐食させる時間によって線や面の強弱をつけていきます。一旦取り出し後、加筆したり、これ以上腐食させたくない部分をマスキングしたりしながら、腐食の工程を繰り返します。腐食が終わったらホワイトガソリンでグランドを拭き取り、リグロインで仕上げ拭きをします。
気温、腐食液の温度によって腐食の進み具合は変わります。ざっくり寒いと遅くて暑いと早くなります。季節ごとにサンプルを取っておくと良いと思います。
醤油と重曹の役割
醤油
・(腐食した後に醤油をかける理由は、)腐蝕液による銅板の腐食が一時的に止まるからです。...中和によって腐蝕の進行が停止しているわけではありません。
・醤油には、糖分やアミノ酸、アルコールなど様々な有機物が含まれています。これらは、銅よりも塩化第二鉄と反応しやすい性質があります。塩化第二鉄が、銅よりも先に糖分やアミノ酸と反応し消費されることで銅の酸化が止まり腐食の進行を止めていると考えられます。重曹
・醤油は、一時的に腐食の進行を停止する働きがありますが、重曹は酸とアルカリの反応により、完全に酸性分を中和させて腐蝕の進行を止めることができます。この反応により発生する気体は主に二酸化炭素ですが、同時に発生するミストには塩化第二鉄液が含まれるため、吸い込まないように注意してください。ー『科学で検証!銅版画制作の疑問(パイロット版)』湊七雄・大矢雅章・西村文宏(SHICHIO MINATO・湊七雄 PUBLICATIONよりダウンロードできます)