展示をしているとどうやって作っているのか尋ねられることがよくあります。そのたびにまったく上手く答えられず、どうしたものかと思ってきました。
実際の版や技法書をお見せしながら話すのですが、もともと言葉が上手くない上に、あまり馴染みのない銅版画を説明するのはとても難しいと感じます。このサイトはそうした時に図や言葉にして伝えられるよう整理したいと思い作り始めました。どなたかの参考になれば幸いです。
「版画の本と画材屋さん」のページでご紹介した本から引用しています。
木版画やリノカット、小学校の図工の時間に作った経験がある方も多いと思います。彫刻刀やナイフで版材を削り、削っていない部分(凸部)にインクを乗せ、紙に刷り取る技法です。
凸版は、画像として刷りとられる部分が凸状に高く突き出ている版をさします。つまり絵柄や文字以外の部分は削りとり、残った凸部に絵具(インク)を付着させ刷りとります。木版やリノカット(ゴムに似た柔らかく薄い板状の素材)、印章、芋版、消しゴム版画などが凸版です。
ー『版画 進化する技法と表現』(文遊社)
前述の凸版に対して、刷りとる部分が凹んでいる版を作る方法です。銅版画は凹版になります。
凹版は、凸版とは逆に、絵や文字部分が凹状、つまり凹んでいる版です。素材は金属が最もよく使われ、その表面を刃物などで彫りこみ…中略…くぼみ(溝)を作ります。そのくぼみにインクを詰めて、圧力をかけてインクを引き出し、支持体に刷りとります。そのため、専用のプレス機が必要です。
ー『版画 進化する技法と表現』(文遊社)
凸版と凹版、彫ったところ削ったところが白くなるか黒くなるかの違いなのですが、削ったところに詰めたインクがどうして紙に写るのか、そもそも「プレス機」というものが何物なのかをお伝えできないと、凹版をイメージしていただくのは難しいのかもしれません。
銅版画は、凹版という形式で銅のプレートに凹みをつくり、その中にインクを詰めて強い圧力をかける。プレートのくぼみに紙がくい込んで、その部分のインクが紙に刷り取られる。刷り上がりはインクのついたところの紙がわずかに突起して、銅版画独特の美しいマチエールとなる。
ー『みみずく・アートシリーズ「銅版画ノート」』(視覚デザイン研究所編)
(プレス機の)構造は、上下二個の頑丈・精密な鉄の円筒(ローラー)が回転して、この間にインクを詰めた銅版と刷り取る紙と、インクを食いこませるフェルト類をのせた鉄板(ベッド)が通過し、円圧による印刷ができるようになっている。
ー『銅版画のテクニック』深澤幸雄(ダヴィッド社)
「食い込む」という言葉が分かりやすいかもと思い引用しました。強い圧をかけるため、厚くて丈夫な紙を使うのですが、その紙は必ず湿らせておきます。柔らかくなった紙が、金属のくぼみ(溝)に食い込んで、インクが紙に刷り取られる様子、少しイメージが伝わるでしょうか。
これから更に作業工程を写真とともに掲載していきますので、そこでまた詳しくお見せできればと思っています。ぜひ体験にもいらしてください。
下の写真は私が小屋で使っている銅版画用プレス機です。プレス機を取り付けた台は古道具屋さんで買った昔の小学校か中学校で使われていた机です。
いつかやってみたい「平版(リトグラフ)」。私自身まったく仕組みを理解できていません。
リトグラフは、石灰石やアルミ版を版材に用いますが、その基本的な原理は、水と油が反発し合う作用にあります。
版材の上に油性の描画材で絵を描くと、描画材がのった部分は油性反応を起こし、油分を引き付ける性質を持ちます。この上から、版面全体に科学的な処理を施し、描画していない部分を水分になじみやすい性質にします。科学処理後、版面全体に水分を与えてから、油性インクのついたローラーを転がすと、インクは描画した部分にだけひきつけられ、描画していない部分は、保たれた水分によってインクを弾きます。これがリトグラフの基本的なしくみです。
ー『『版画 進化する技法と表現』(文遊社)