色々な線と面

銅版画の線と面

制作工程でご紹介している色々な技法でできる線や面を一枚の版に並べて作ってみました。私がよく使う5つの方法が入っています。カッコ内は腐食時間で、気温15℃から20℃の環境下での目安です。

①エッチング(45分)+ディープエッチング(70分)
腐食法の基本エッチング(「グランドを引く」「転写する・描画する」「腐食する」)で描画し腐食し一旦グランドを拭き取ります。次に黒ニスでワンピースと靴以外の箇所をマスキングし腐食する(「ディープエッチング」)と、ほんのりグレーがかった調子になります。この部分がディープエッチングです。

②エッチング(45分)+アクアチント(15分・20分)
まず線で描き、一旦グランドを拭き取り、黒ニスでマスキングするまでは①と同じです。
今度は面の部分に細かく砕いた松ヤニを撒き、熱して版に定着させ、腐食します(15分)(「アクアチント」)。
より均一な面を作るために、腐食した後一度アルコールを使って松ヤニを除去し、再度撒いて熱し定着させて2度目の腐食(15分〜20分)しました。

③ソフトグランドエッチング(10分)
基本のエッチングで使うハードグランドに比べて粘度が高いソフトグランドを使います。ソフトグランドはハードグランドのようには固まらず軟かく、鉛筆を使って描画すれば鉛筆の線そのままの柔らかい調子を出すことができます。(「ソフトグランドエッチング」
ワンピース部分の線ではない点の集積のよう(?)に見える箇所は、描画する時にかぶせたトレーシングペーパーの上から指でなぞってグランドを剥がしたり、直接筆でなぞってグランドを剥がしたものです。

④ドライポイント
腐食液を使わず直接描画する「直接法(直刻法)」の一番シンプルな技法ドライポイントです。(「ドライポイントとエッチング」
ドライポイント用の太めのニードルで描いた線と、とにかく削り続けてできる柔らかい面がきれいな技法です。(「ドライポイント」)。

銅版画の線と面(版の写真)

ほぼ全部のせ

一つの作品にたくさんの技法を詰め込んでいるものはほとんどないのですが、この作品は4つ入っていました。ベースはエッチングで、左半分の黒い部分がアクアチント、真ん中の真っ黒な部分がドライポイント(というかメゾチントの目立てのような感じですが...)、右側のグレーに抜けたようなところがディープエッチングです。
これは途中まで全然上手くいかなかった記憶があります。ディープエッチングにしている部分をアクアチントにするとのっぺりしてしまい、思い切って腐食時間を長めにしてみて出来上がりました。

銅版画の線と面(版の写真)