銅版画を刷る 後半

寒冷紗で拭き終わったら、仕上げ拭きをします。版面に残っている油分の膜、油膜を残すか残さないかで拭き取り方が変わってきます。作品に合わせて、お好みで。

銅版画刷り(油膜あり)
銅版画刷り(油膜なし)
 
 

油膜を残す

寒冷紗で拭き取っただけで十分ですが、気になるところがあれば軽く仕上げ拭きをします。電話帳がとても使いやすいです。電話帳がない場合は、人絹で先ほど使った寒冷紗を包んで、溝に入らないように気をつけながら、寒冷紗の時と同じようにくるくると拭き取ります。

電話帳で拭く
人絹を丸めて拭く

最後にプレートマークをきれいに拭いてプレス機にかけます。
ウエスよりもっとハリのある手ぬぐいのような布も使いやすいです。数滴リグロインを布に含ませると取りやすいのですが、その際は版面との境目が滲んでしまわないように気を付けます。

プレートマークを拭く

油膜を残さない

色々なやり方がありますが、私は人絹の布の方向を利用して拭き取っています。

人絹(レーヨン )はつるつるしていて、なかなか上手く扱うことができなかったので、まんじゅうなるものを作り、固定して拭いています。
私が勝手に作って勝手に命名したまんじゅう。いらなくなった人絹を大量に重ねて、新しい人絹で包んで縫ったもの。アイロンがけに使う万十のイメージがあったので、そのまままんじゅうと呼んでいます。そういう勝手な方法なので、ここから先はご参考までに。

人絹の方向
人絹の方向

布が伸びる方向に対して垂直方向(タテ地)に沿ってまんじゅうを包み、しっかり張った状態にします。

人絹で包む
人絹で包む

動かす方向は縦だけ。銅版をしっかり固定して、素早く上下に動かし油膜を取ります。寒冷紗の時と同じように、常に新しい面にして、左半分、右半分を拭いていきます。

人絹で油膜を拭き取る
人絹で油膜を拭き取る

僅かに残ってしまったら、手のひらを直接、もしくは手のひらと版の間に電話帳などの紙をはさんで拭き取る方法もあります。最後はプレートマークをきれいに拭きます。

手のひらで油膜を拭く
プレートマークを拭く
 
 

プレス機で圧をかける

プレス機のベッドプレートに見当を付けた方眼紙を置き、版と用紙を置く位置に印をつけ、アクリルシートでカバーをしておきます。
銅版を置き、湿らせておいた紙の水気を吸い取り、版に重ねます。当て紙を重ね、フェルトをかけます。プレス機のハンドルはゆっくり、途中で止めず、最後まで回します。
プレス機の種類や状態、好みによりますが、私は往復させています。

版をプレス機に置く
湿らせた紙の水分を取る
プレス機に紙を置く
当て紙を重ねる
プレス機のフェルトを被せる
刷り上がり

乾かす

しっかりと湿らせた紙を使っていますので、板に水張りをしてよく乾燥させます。

版画では、絵の下、プレートマーク直下にエディションと制作年、タイトル、サインを書きます。そのスペースと水張りテープの幅と、額装する際に必要な余白のことも考えて紙は大きめに切って使います。今回の作業工程で使った紙はかなり小さめです。

版画の決まり事について。とても良いサイトがあるので、一部引用させていただきます。ぜひリンク先のページをご覧ください。面白いです。

サイン・エディション

サインは、版画作品においてその作品のオリジナル性を保証するために、作者が完成後に署名するもので、エディションは作者が定める限定部数のことをいい、その限定部数を保証するために作者が完成した作品の余白部分にエディション・ナンバーを記入します。これをサインドアンドナンバード(signed and numbered)と呼びます。
武蔵野美術大学 MAU 造形ファイル

刷り終わり

プレス機で圧をかけて刷るので、意外と潰れやすくそんなにたくさん刷れません。試し刷りもできるだけ少なく、刷りは一回の失敗も出したくない、緊張の作業です。(潰れないよう表面をメッキコーティングをしてくれるところもあるそうです。)

エディション分一度に刷る人と、注文ごとに刷る人と色々あるようです。私は同じ条件下で一気に刷ってしまいたいので、一日二日刷り続けることになります。ヘトヘトのクタクタ。作業が終わると大体夕方で、刷り上がった作品に西日が当たってインクが艶めく瞬間が唯一幸せな時間です。

水張りテープを使って乾燥させる