寒冷紗で拭き終わったら、仕上げ拭きをします。版面に残っている油分の膜、油膜を残すか残さないかで仕上がりが変わってきます。作品に合わせて、使い分けます。

銅版画刷り(油膜あり)
銅版画刷り(油膜あり)

油膜を残す

インクの油分を残すことで、グレートーンを作ります。寒冷紗の拭き取りで油分を調整するだけで十分ですが、気になるところがあれば電話帳のような紙や、この後出てくる人絹を使って仕上げ拭きをします。

最後にプレートマークに付いたインクを丁寧に拭き取って、プレス機にかけていきます。プレートマークを拭く際は、ウエスよりもっとハリのある手ぬぐいのような布が使いやすいです。ホワイトガソリンやリグロインを使うと版面との境目が滲んでしまうので、乾いた布で拭くことをおすすめします。

寒冷紗で仕上げ拭き
プレートマークを拭く

油膜を残さない

インクの油分を完全に拭き取り、背景を白くする方法です。
私は人絹(レーヨン )を使うのですが、つるつるしていてなかなか上手く扱うことができなかったので、使い終わった人絹を大量に重ねて縫ったもの(勝手にまんじゅうと命名)を作り、固定して拭いています。ご参考までに。

(1)人絹でまんじゅうを包み、しっかり張った状態にします。

人絹とまんじゅう
人絹でまんじゅうを包む

(2)銅版を固定して、版面を撫でるように拭いて油膜を取ります。寒冷紗の時と同じように、人絹は常に新しい面にして拭いていきます。
(3)最後はプレートマークをきれいに拭きます。

人絹で拭き取る
人絹で拭き取る
プレートマークを拭く

プレス機で圧をかける

プレス機のベッドプレートに見当を付けた方眼紙を置き、版と用紙を置く位置に印をつけ、アクリルシートでカバーをしておきます。
銅版を置き、湿らせておいた紙の水気を吸い取り、版に重ねます。当て紙を重ね、フェルトをかけます。プレス機のハンドルはゆっくり、途中で止めず、最後まで回します。プレス機の種類や状態、好みによりますが、私は往復させています。

版をプレス機に置く
湿らせた紙を置く
当て紙を重ねる
プレスきのフェルトを被せる
プレス機のハンドルを回す
フェルトを上げる
刷り上がり

湿らせた紙を使っているので、水張りテープで板に貼り付けてよく乾燥させます。一晩紙を湿らせた場合、二日は乾燥させたいなと思って予定を組むようにしています。

水張りをして乾燥させる

和紙に刷る

銅版画用の紙は硬めのものから柔らかいもの、真っ白からしっかりと黄味を感じられるものまで種類も豊富で、どれもとても刷りやすく作られています。それで十分なのですが、風合いのまったく異なる和紙に刷るというのは挑戦してみたいことの一つです。

銅版画用の紙はかなり厚手なので水を張ったバットにどかっと入れていても良いのですが、和紙を使う時は、刷る直前に刷毛を使って湿らせたり、霧吹きで水をかけたりするくらいにしています。
上の図は、主に和紙が使われる木版画の技法書に載っていた和紙の湿らせ方です。

和紙の湿らせ方

作品の仕上げ

版画では、絵の下、プレートマーク直下にエディションと制作年、タイトル、サインを書きます。そのスペースと水張りテープの幅と、額装する際に必要な余白のことも考えて紙は大きめに切って使います。
版画の決まり事について。とても良いサイトがあったので、一部引用させていただきます。ぜひリンク先のページをご覧ください。

サイン・エディション

サインは、版画作品においてその作品のオリジナル性を保証するために、作者が完成後に署名するもので、エディションは作者が定める限定部数のことをいい、その限定部数を保証するために作者が完成した作品の余白部分にエディション・ナンバーを記入します。これをサインドアンドナンバード(signed and numbered)と呼びます。

武蔵野美術大学 MAU 造形ファイル