酸化膜の除去・脱脂の道具

ノントキシック版画技法では、版面に油分を残さないことがグランドをきれいに塗るために大切この工程がとても大切になります。古典的な技法でも大切ですが、中でも特に「リフトグランドエッチング」をする時にはこの工程がとても重要だと思っています。

ノントキシック腐食銅版画を成功に導く3つのポイントがあり、それは「ゴールデンルール」と呼ばれています。この基本をマスターすればストレスなく制作を進めることができます。
GOLDEN RULE1 酸化膜の除去:酢+塩の溶液で元の銅色を取り戻す
GOLDEN RULE2 脱脂:しょうゆを使って版面の油脂分をしっかり取り除く
GOLDEN RULE3 硬化・定着:グランドをしっかり硬化・定着させる

ー「NON-TOXIC INTAGLIO PRINTMAKING ノントキシック銅版画への誘い」(湊七雄/マルニックス・エヴェラールト)(福井大学教育地域科学部 湊七雄研究室)

酸化膜の除去・脱脂のための道具と材料

・耐水ペーパー
・バット
・お酢
・塩
・しょうゆ
・セルローススポンジ
・計量スプーン
・計量カップ

酸化膜の除去・脱脂の手順

(1)耐水ペーパー1500〜2000番を使って表面の汚れを取り除きます。

耐水ペーパーをかける

(2)酸化膜除去の工程に入ります。お酢900ml:塩大さじ1の割合で酸化膜除去材を作ります。ホワイトビネガーを使うと臭いとべたつきが抑えられるようです。
(3)バットに入れて銅版を浸し、バットをゆすりながら汚れを取ります。銅のピンク色が出てきたら酸化除去膜から取り出すタイミングです。
(4)水でよくすすいで、乾いた柔らかいきれいな布で拭きます。

酢と塩を混ぜる
酸化膜除去液に銅板を入れる
酸化膜除去液に銅板を入れる
水で洗う

酸化被膜とは

金属表面に発生する不動態の被膜。通常は空気中の酸素に触れて自然発生する被膜を指し、金属と空気が直接触れることを防ぐ保護膜としての効果をもつ。酸化皮膜は保護膜として働く効果があるが、一方で電気伝導性能には悪影響となる。そのため精密機器を製造する工程や電気伝導性能が求められる半導体等では塩酸や酸化皮膜除去剤を使って酸化皮膜の除去を行う必要がある。

株式会社 武杉製作所

酸化膜を取り除く前の状態と、取り除いた状態のものです。

酸化膜除去前
酸化膜除去後

(5)ここから脱脂の工程です。セルローススポンジにしょうゆを染み込ませます。
(6)銅版の表面を洗います。
(7)水ですすいで、きれいな布などで拭きます。表面を手で触ってしまっては台無しなので気を付けます。これでも油分が取り切れない場合は、台所用洗剤で表面を洗います。

脱脂(しょうゆを染み込ませる)
脱脂(しょうゆで洗う)
脱脂(水ですすぐ)

ノントキシック版画技法については下記のサイトや文献をもとにしています。

・北山銅版画室ウェブサイト
・マルニックス・エヴェラールト「もうそこまで来ている、版画の未来。」(2016)版画学会第45号
・湊七雄「ノントキシック版画技法の普及に向けたワークショップの開発」(2016) 版画学会第45号
・SHICHIO MINATO・湊七雄ウェブサイト Additional Notes「PRINTAMAKING WORKSHOP ARTIST'S GUIDE ノントキシック銅版画への誘い」追記事項