銅版画制作工程
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水溶性の絵の具を筆を使って版に直接描画しグランドを引きます。乾燥せた後それをお湯に浸すと、水溶性の絵の具が溶け、その上にのっていたグランドが持ち上げられ(リフト)はがれ、銅の表面が露出します。それを腐食すると筆で描いたタッチを生かした線や面を作り出すことができます。版に定着しない水溶性絵の具と定着するハードグランド利用したこの技法を「リフトグランドエッチング」と言います。
絵の具ではなく砂糖の飽和溶液を使うものを「シュガーアクアチント」と言い、リフトグランドとは区別して紹介されていることが多いですが、仕組みは同じです。
・ポスターカラー(白)
・アラビアゴム
・筆
・グランド
・お湯
・バット
お好みで
・タルク
・ペン
版面に油分が残っているとポスターカラーをはじいてしまうので「酸化膜の除去・脱脂」で油分をしっかり取り除きます。
(1)リフトグランドで使えるポスターカラーは白がおすすめです。これ以外の色だとこの後、グランドを持ち上げる(リフト)時に上手くいきませんでした。これに水で溶かしたアラビアゴムを混ぜて描画します。
どうしても版面を滑ってはじいてしまう時にタルクを撒いて拭きます。逆に、はじいた効果を出したい場合は、脱脂をし切らないか、ポスターカラーで描く前に油を少したらします。
また、ポスターカラーだけでもリフトグランドは可能です。アラビアゴムを入れた方がよりスムーズにリフトできるように感じ、私は使っています。
(2)絵の具の表面が乾いたら、グランドを引きます。グランドが濃すぎるとこの後の工程ではがれにくくなってしまうので、様子を見ながらホワイトガソリンなどで薄めます。(関連するページ 「グランドを引く・塗る」)
(1)グランドが乾いたら、ちょっと熱めのお風呂くらいのお湯をかけていきます。ポスターカラーが溶けて、グランドが持ち上がり、はがれてきます。あまり熱すぎるお湯は周りのグランドも溶かしてしまいます。
(2)バットや版自体をゆすったり、上手くはがれない場合は、柔らかい筆で優しくなでます。
(3)はがれ過ぎてしまったら黒ニスでマスキングして、このまま腐食して(「腐食する」)ディープエッチングにしたり、アクアチント(「アクアチント」)で黒い面を作ることもできます。
CREA銅版画工房さんという工房でペンを使ったリフトグランドの実験をされていたので、私も真似させていただきました。筆のようなペンてるサインペンと、細い線が描けるホルベインのMAXON COMIK PENを使ってみました。(写真はお湯をかけてグランドをはがした後の状態。)
ペンてるサインペンはとにかくはがれるのが一瞬。お湯をかけた瞬間にインクもグランドも煙のように消えてしまいます。この充填インクがあったら大きな筆でも描けて便利だなと思いました。色々なやり方があってとても楽しくなりました。他のペンも色々を試してみると面白そうです。