銅版画には大きく分けて「直接法(直刻法)」と「間接法(腐食法)」(関連するページ 「ドライポイントとエッチング」)があります。間接法の一番の基本「エッチング」の最初の工程。防食剤「グランド」を塗布していきます。(2021年春「固形グランドを塗る」追記)

グランドを引く・塗る道具と材料

道具と材料

・防食シート
・カッターマット
・カッター
・筆
・グランド
・グランドを薄める場合は小皿や紙コップとリグロイン

防食シートを貼る

画材屋さんに売っている防食シート、防腐シートでも良いですし、ホームセンターなどにある耐熱の壁紙やビニールシートなども使えます。耐熱のものは火を使った技法を用いる際に、一回一回剥がさなくてすむのでとても便利です。
(1)版より少し大きめに切ります。
(2)空気が入らないように、布などで空気を追い出しながら、きれいに貼ります。
(3)余分な部分をカットして、グランドを塗る前にもう一度拭いておきます。

防食シートを貼る
防食シートを貼る
防食シートを貼る

液体グランドを筆で塗る

特に小さい版の場合は、これがとても便利です。瓶から直接グランドを筆で取り塗っていきます。多少のムラがあっても良いので、厚くなりすぎないように注意して塗ります。

液体グランドを筆で塗る

液体グランドの流し引き

版が大きい場合は「流し引き」が便利です。分かりやすいように大きめの版を使ってみました。ちなみにこの18cm幅がこの小屋のプレス機で刷ることのできる最大サイズです。

(1)この日はグランドが濃くドロっとしていたので、紙コップにとってリグロインで薄めました。
(2)版の上に、多めにグランドを流します。
(3)ゆっくり手首を回しながら、全体に広げていきます。
(4)残った分を紙コップや瓶に戻していきます。縁まできれいに行き渡らなくても、腐食する前に筆で塗布すれば良いので、あまり気にせずに。
(5)壁に立てかけるなどして乾燥させます。ウォーマーや電熱器で温めると速く固着させられます。

グランドの流し引き
グランドの流し引き
グランドの流し引き
防グランドの流し引き

固形グランドを塗る

固形グランドを塗る道具

塗る時にウォーマーやローラーが必要ですが、固形グランドはとても扱いやすくて便利です。版画用のウォーマーがなくても、家庭用の電熱器で代用できます。ただ、現在市販されている固形グランドは長時間の腐食にはなかなか耐えられないかなという印象です。短時間の腐食であれば、扱いやすさという点で液体よりおすすめです。
(上で使用している液体グランドはこの固形グランドをリグロインで溶いたものです。)

(1)きれいに油分を拭き取った版をウォーマーにのせ、2〜3分置いてガンガンに熱くします。
(2)グランドを塗ります。しっかりと熱くしていると、グランドを軽くすべらせるくらいの力加減で塗ることができます。
(3)ローラーで縦横に伸ばします。ローラーに移ってしまったグランドもゆっくり温めながら版に移していきます。厚さが足りない時は、グランドを塗りローラーでのばすを繰り返します。
(5)多少のムラは温めている間にのびていきます。ウォーマーから下ろして15〜20分で固まります。腐食の途中で剥がれてしまわないよう、しっかり濃く塗ります。

銅版画(固形グランドを塗る)
銅版画(固形グランドを塗る)
銅版画(固形グランドを塗る)
銅版画(固形グランドを塗る)
銅版画(固形グランドを塗る)

温める

・液体グランドが固まってしまったら
立てかけている写真の版には少し塊りのようなものが出てしまっています。この程度では描画に影響はありませんが、固まったものが多くなってきたら湯せんをします。どうにもならないくらい多くなってきたら濾したりもします。

・グランドをより早くしっかり定着させるために
グランドを引いた後、ウォーマーがあればウォーマーに乗せて温めると早くしっかり定着します。アクアチントで使うアルコールランプであぶっても、ドライヤーで熱風を当てても効果は同じです。自分にとって楽な方法でお試しください。

グランドを乾かす

グランドを塗り直すときの注意点

一度グランドを完全に取ってから、もう一度グランドを引き直して加筆・腐蝕する場合、すでに腐蝕された溝に入れたはずのグランドが腐蝕途中にはがれてしまうことがあります。まだらに線が太くなったり、よぼよぼした線になったり。
グランドを濃くして防ぐこともできますが、腐蝕時間を長くしたい場合、絶対今ある線を守りたい場合は、液体グランドではなく固形グランドを使って防蝕することをおすすめします。絶対に傷つけたくない部分に封蝋を入れてグランドを引くという方法もあるそうです。