銅版画制作工程
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ノントキシック版画技法におけるエッチング、2つ目の方法についてのページです。
こちらのページでは水性絵の具とメディウムを混ぜてグランドを作る方法についてご紹介したいと思います。この方法は北山銅版画室の土居さんという方が開発された方法です。
塗布後に長く加熱し乾燥させればハードグランドに、短時間の加熱にすればソフトグランドとして使えるすごいグランドです。
・水溶性版画絵の具
・リキテックス ジェルメディウム
・ローラー
・ペーパーパレット
・計り
・筆
・ビンなどの密閉容器
・ニードル
・ウォーマー
・ヘラ
・鉛筆
・トレーシングペーパー
(1)水溶性版画絵の具2に対して、リキテックス「ジェルメディウム」1.5を取り、よく練りグランドを作ります。
(2)ローラーに均一にグランドをのせていきます。
(3)ローラーにのせたグランドを、よく脱脂をした版(「酸化膜の除去・脱脂」)に移しながらのばしていきます。版に直接グランドをのせてからローラーでのばすより、ローラーに絡めてからの方が無駄なく付いていきます。
(4)ハードグランドとして使う場合は2分程度、もわっと蒸気が出てくるくらい加熱し、ウォーマーから下ろしてしっかり乾燥させます。加熱を30秒ほどにして、ペタペタっとした状態でソフトグランドとして使うこともできます。
ソフトグランドとして使う場合
・時間の経過とともに、自然と固まってハードグランドになってしまうので、描画に時間がかかるものには適しません。もう一つソフトグランドを自作する方法がありますので、「ノントキシック版画技法 ソフトグランドエッチング」もお試しください。
・描画後に再度ウォーマーで加熱し、グランドを硬化させてから腐食させます。これにより、通常のソフトグランドのように指紋や傷が簡単についてしまうということがなくなるので、とても扱いやすくなります。
(5)グランドがしっかり乾いたら、ニードルで描画します。転写する場合は、鉛筆で下絵を描いたトレーシングペーパーを、描いた面を版面に付けて固定し、下絵部分をなぞります。版画は反転して刷り上がります。(これまでの方法、「転写する・描画する」と同じで、版と下絵を描いたトレーシングペーパーをプレスして転写する方法も可能です。)
描き心地は、床用ワックスがパリパリと軽いのに比べ、しっかり粘度というか重みがあります。ニードルで描画する際、床用ワックスより力を必要とするように感じます。どのグランドでも同じですが、塗る量の調整がとても重要です。
(6)描画が終わったら、タイマーをセットし腐食します。
(7)途中で腐食止めをする場合、残ったグランドを使用します。マスキングしたらウォーマーで温めて固めて、腐食します。
これは私個人の方法なのですが、細かいマスキングをしたい場合に、残念ながら生産終了になってしまったアクリル系水性グランドや、マジックインキ補充液を使っています。マジックインキは有機溶剤が含まれるので、ここでご紹介するのには適さないのですが、アルコールで除去できる(除去には有機溶剤を使わない)ので、黒ニスよりは負担が少ないのではないかと思い、作品によっては使うことがあります。
(8)腐食が終わったら、アルコールでグランドを除去します。刷り方はこれまでの方法と同じです(「基本の刷り 前半」)。
・BIG Ground - Baldwins Ink Ground
イギリスのAndrew Baldwinさんが開発したグランドです。文献を参考にさせていただいている福井大学の湊先生が、現時点で最も完成度の高いノントキシックのハードグランドと書いていらっしゃるものです。ただ日本では販売されておらず、海外サイトからの個人輸入になってしまいます。開発者ご本人のYouTubeチャンネルでも、このグランドやその他ノントキシック版画技法について知ることができます。
YouTube : Hard Ground B.I.G - Andrew Baldwin
ノントキシック版画技法については下記のサイトや文献をもとにしています。
・北山銅版画室ウェブサイト
・マルニックス・エヴェラールト「もうそこまで来ている、版画の未来。」(2016)版画学会第45号
・湊七雄「ノントキシック版画技法の普及に向けたワークショップの開発」(2016) 版画学会第45号
・SHICHIO MINATO・湊七雄ウェブサイト Additional Notes「PRINTAMAKING WORKSHOP ARTIST'S GUIDE ノントキシック銅版画への誘い」追記事項