ワンダーカッツ

ダイカットマシンとしてワンダーハウスから販売されている「ワンダーカッツ 小型マシン」を使った銅版画、紙版画の作品作りをご紹介したいと思います。凹版画初心者の方が、最低限の道具と材料で、ご自宅のテーブルでちょこっと作れたらいいなと思って作ったページです。薬品も使わず安全ですので、お子さまと一緒でも大丈夫です。

▪️道具や材料について▪️
できる限り安くで簡単に手に入れられるものを選んでいますが、刷り上がりを左右する紙とインク(と、できればラシャも...)は専用のものを揃えることをおすすめします。

紙は200g/m²以上の厚みがあると安定して刷れます。そうしたものは水彩紙でもあるのですが、ほとんど値段が変わりませんので、版画用を購入する方が良いかと思っています。インクも版画用以外で代用できるものがないか検討しましたが、春蔵Haruzo銅版画インキが1,000円以下と、版画用インクの中ではかなり手頃な価格で出ていますのでおすすめです。

プレス機で刷る時にフェルトやラシャといった布を使用するのですが、ここでもそれが必要となります。通常の銅版画でもこの布類の状態や種類によって刷り上がりが変わり、とても重要となってきます。ただ決して安くはないですので、最初は100均や手芸屋さんで購入できるフェルトを使っていただき、上手く刷り上がらずに困ったら、書道用の下敷きとして販売されている純毛ラシャや、超小型プレス機用に販売されているラシャを使えると良いのではないかと思います。

上手く刷り上がらない時、作り手の力量の問題というより、材料や道具の影響であることがとても多いです。何度やっても上手くいかない時、ぜひ自分には無理かなと思わず、道具で変えられるところがあれば変えてみてください。必ず素敵な作品ができるようになります。


道具と材料① ー100均で揃えられるもの・家にあるもの

・カッターマット
・カーペット用のすべり止め(なくても可)
・定規
・鉛筆(HB)
・ボールペン
・金属ヤスリ、紙ヤスリ
・ガムテープ
・マスキングテープ
・壁に貼るリメイクシート(銅板の裏に貼るカッティングシートの代用)
・トレーシングペーパー
・プラスチック製の硬めのヘラ
・ゴムベラ(お菓子作り用のシリコンスパチュラも可)
・軍手
・筆

・牛乳パック
・新聞紙、タウンページやわら半紙
・タッパー、バット、皿、鍋など水を張れるもの
・タオル
・ドライヤー
・台所用洗剤、あれば無水エタノール
・油

ワンダーカッツを使った制作のための道具と材料ー100均で揃えられるもの・家にあるもの

道具と材料② ー画材屋さんで揃えたいもの

・ワンダーカッツ(¥4,800)
・銅板(0.5mm厚 / ホームセンターでも購入可)
・インク(春蔵Haruzo銅版画インキNo.1, 50ml ¥897 / 文房堂アーチスト銅版画インキ ブラック1, 50ml ¥1,430)
・紙(オリオン 版画紙アソートセット 全8種B4各1枚入 ¥1,320 / オリオン ポストカード ハーネミューレ版画紙20枚 ¥825)
・大型カッター (OFLA特大H型刃)
・カーボン紙(100均でも発見)
・ニードル(新日本造形 生徒用ニードル ¥88)
・純毛ラシャ(MY型プレス機用 ¥1,650 / 書道用下敷きとして販売されている純毛ラシャ ¥1,000前後)

(価格は2024年12月時点)

ワンダーカッツを使った制作のための道具と材料ー画材屋さんで揃えたいもの

1. 版材を準備する

紙版画で使用する版材は、牛乳パックを使用します。

銅板を準備します。
(1)カッターマットにすべり止めを置き、銅板をセットします。
(2)切りたいサイズに合わせて定規を置き、大型のカッターで繰り返し切り込みを入れていきます。
(3)裏からも同じようにカッターを当てていきます。
(4)ある程度切り込みが入ったら、表から少し折って、裏返して少し折って、パタパタするとパキッと切れます。
(5)切断面はとても危険ですので、必ずヤスリがけをしてください。紙ヤスリは何か(ここでは積み木を使用)に当てると使いやすいです。
(6)金属の削りかすは体に良くないので、ガムテープなどで掃除します。

銅板切断ーすべり止めを敷く
銅板切断ーカッターで切り込みを入れる
銅板切断ー切り込みに沿って折る
銅板切断ー切り込みに沿って反対の面から折る
銅板切断ーパキッと折れる
切断面に金属ヤスリをかける
切断面に紙ヤスリをかける
金属クズをガムテープで掃除する

(7)カッティングシート(DIY用の壁紙などで代用可)を銅版より少し大きめに切り、貼ります。裏面に傷が付くのを防ぎ、裏面も別の作品を作るときに使用したいので、私はこのようにしています。
(8)表に出てしまった余分なシートを切ります。ここをきれいにしておくと、刷りの時のインクが溜まりにくく、仕上がりがきれいになります。
(9)もしあればアルコールティッシュや無水エタノールで表面を拭き、銅板についた油分を拭き取っておきます。台所用洗剤で洗うのも良いです。転写する際に油分が邪魔になることがありますので、きれいにしておくと良いと思います。
(10)牛乳パックを版材とした紙版画もご紹介したいので、同じ大きさにカットしました。

カッティングシートを切る
カッティングシートを貼る
カッティングシートの余った部分を切る
アルコールなどで表面の油分を拭き取る
紙版画用の牛乳パックと銅板

2. 下絵を転写する

下絵を描かずに作り始めたい方は、この下の「3. 描画する」から始めてください。下絵の転写方法をご紹介します。

(1)下絵を描いたスケッチブックに、トレーシングペーパーをマスキングテープで貼り付けます。
(2)HBの鉛筆を使って、下絵をトレーシングペーパーに描き写します。

スケッチブックにトレーシングペーパーを固定する
トレーシングペーパーに下絵を描き写す

(3)銅版画は刷ると反転します。下絵を裏返し、版材に被せます。

(4)紙版画の場合、裏返して被せたトレーシングペーパーの下絵をボールペンでなぞります。先ほど描いた鉛筆の粉が版材の紙に付き、下絵が転写されます。このため、HBくらいの柔らかさの鉛筆を使います。

トレーシングペーパーを裏返す
マスキングテープでとめる
ボールペンでなぞる
紙版画の転写完了

(5)銅版画の場合、カーボン紙を使って転写します。裏返して被せたトレーシングペーパーと銅板の間にカーボン紙を入れ、下絵をボールペンや鉛筆でなぞります。時々写り具合を確認してみてください。

下絵を裏返す
マスキングテープでとめる
カーボン紙をはさむ
鉛筆でなぞる
写り具合を確認する

3. 描画する

ニードルなどを使って描画していきます。

今回このワンダーカッツを使った作品作りは、銅版画の技法で言う「ドライポイント」になります。銅版画を描画する道具であるニードルには色々な種類があり、ドライポイント用のニードルが一番描きやすいのです。ただ、そこそこの値段するので、まずは生徒用ニードルとして100円前後で販売されているエッチングニードルで良いと思います。裁縫用の目打ちなど、先の尖ったものなら何でも描画できます。色々お試しください。

(1)紙版画の場合、ニードルで描画する他にも、紙ならではの面白い効果を出すことができます。
例えばカッターで切り込みを入れ、牛乳パックのつるつるした面の一番上の層だけを剥がすことで、広い面を深い黒にすることができます。また、紙ヤスリをかけて暗いトーンを作ることもできます。完成品は次のページ「ワンダーカッツを使って 後半ー紙の準備・刷り・洗浄」の「刷り比べ」をご覧ください。

この他にもボンドを塗ったり(塗った部分ではインクが弾かれ白く抜ける)、レースや葉っぱを貼り付けてコラグラフ作品を作ることもできます。(参考「その他の技法ーカーボランダム」

ニードルで描画する
カッターで切り込みを入れる
紙の一番上の層をはがす
ヤスリで表面を削る

(2)銅版画の場合、ニードルで描く際の強弱で線の太さや力強さを調節することができます。紙版画の場合と同様、紙ヤスリで表面に暗いトーンを作ることもできます。銅版画の制作工程「ドライポイント」のページに実際の作品を載せています。

描画が終わったらいよいよ刷っていきます。「後半ー紙の準備・刷り・洗浄」に続きます。

ニードルで描画する
ニードルで描画する